田中 宏規:

データスキーマ設計に関する情報を蓄積するシステムの提案と実装

 
 本研究ではデータ中心システムの開発におけるデータスキーマ設計の成果物と,さらに問題領域に対する開発者の認識や思考の過程を合わせてデータベースに蓄積し,他の開発者から参照できるようにするシステムの提案と実装をおこなった.本システムはデータ化可能な経験や知識を蓄積し,システム開発における情報共有を支援することを目指している.
 データ中心システムにおけるデータベースの構造を決めるデータスキーマの設計過程は,開発者による問題領域や保存対象の認識の仕方に大きく依存している.したがって開発者が経験を積みながら過去の事例や傾向にもとづいて判断することを求められる.本研究ではまずシステムの実際の開発過程にもとづいて,どのようにデータスキーマ設計が行われたか具体例を示した.データスキーマ設計過程では「保存する対象そのものを分析し認識する」,次に「対象をどのように保存するかのデータベースの構造を決める」という工程が段階的に行われると考えられる.
 以上の開発工程が段階的に実行されることを想定し,データベースを使用してデータスキーマ設計に関する成果物を蓄積されるシステムを提案した.本システムは,システムの開発プロジェクトごとに上記の項目に対応付けて,保存対象そのものを表現する項目の集合と,テーブルとカラムを使用した論理的なデータベースの構造を主に蓄積する.
 システムの構成については,クライアント・サーバモデルを採用した.サーバはAction Message Formatプロトコルを利用してRemote Procedure Callサービスを公開する.クライアント側はAdobe®Flash®によるGraphical User Interfaceクライアントと,Python®スクリプトの2種類を使用した.
 クライアントから利用されるサービスの内容については大きく分けて次の3つの機能を実装した.1つ目にデータスキーマ設計情報の新規登録機能を実装した・データスキーマ設計に関する事例や得られた知識をフォームに入力し,データベースに登録して蓄積するために使用する.2つ目に蓄積されたデータスキーマの一覧表示機能を実装した・蓄積されたデータスキーマを閲覧するために使用する.3つ目に蓄積されたデータスキーマ設計情報の検索機能を実装した.登録された情報の中から条件を指定して検索を行うために使用する.
 システムの問題領域に属する保存項目や,テーブルやカラムなどの論理的なデータベース構造といったデータスキーマ設計に関する情報は,システム開発が行われたプロジェクトごとに登録ができるようにした.またサーバはサービスを公開しており,他の開発者が閲覧することが可能である.蓄積された情報を参照することによって,新しくプロジェクトに参加した開発者や別のプロジェクトに携わる開発者とも互いに情報を共有できる.また,過去の事例や経験を発見するために検索機能を利用し,効率的に情報に到達できると期待される.